「第4回 教育における情報化に関する研究会」を開催しました
平成28年6月25日(土)13時30分より、山形駅前「ゆうキャンパス・ステーション」において「第4回 教育における情報化に関する研究会」を開催しました。
まず、東北文教大学准教授の眞壁豊氏より、「教育用オシロスコープの開発から俯瞰する”教育の情報化”」という演題で、携帯ゲーム機用に開発したオシロスコープの活用法に関する解説と、関連する学習内容から、教育の情報化全体の概説を試みる講演でした。
来場者同士で小グループを組み、各グループに1台ずつ配られたオシロスコープを実際に操作しながら、中学校理科の「音の性質」が、簡単に行えることの解説が行われました。このことから、教育にICT機器が入ることは、「理論」と「体験」の往復が容易になり、またそれによって学習の進度が速くなったり、学習の幅が拡がることで、カリキュラム上設定されている学年が変化する可能性が示されました。そのような可能性を持つ「教育の情報化」について、国内における最近の動向と併せて、幼児教育・幼児保育、そして障がい者教育との接点を簡単に説明しました。
休憩をはさみ、認定こども園つるみね保育園の園長である杉本正和氏による「ハイブリッド保育~9割のアナログ保育と1割のデジタル保育~」では、普段の園の様子を動画で紹介しながら、ICTの活用だけにとらわれないアイディアあふれた実践の数々が紹介されました。
つるみね保育園で行われているカリキュラムは、保育所保育指針や幼稚園教育要領に示される5領域を、より具体化した「未来力」の内容で示したもので、デジタルアナログ織り交ぜた多彩な内容で展開しています。その一端を会場の参加者の前で実演しました。続いて実際に園で行われているさまざまな保育の例が動画で紹介されました。日々の園のあらゆる司会進行を全て園児自身が行い、またペダルのない二輪車「ストライダー」による運動遊び、シャボン玉や静電気などを通じて探究心を育てる科学遊びなど、アナログ保育も他では見られないアイディアあふれる内容です。続いてデジタル保育の例では、タブレットを用いてさまざまな国の子ども達や大人達とあらゆる言語でコミュニケーションをしたり、給食の食材をスクリーンに映し出すことで、園児達の「おいしそう」という言葉を引き出す姿が紹介されました。まとめとして、ICTはコミュニケーションを促すものであるとし、安心安全愛情を確保した上で、実践を積み重ねることが大事であると話されました。
最後に、福島県立平養護学校教諭の稲田健実氏が「特別支援教育におけるICT利活用について~拡がるコミュニケーション~」と題して、「環境が障がいをつくる(なくす)」という基本的な考えに基づき、障がいを持つ者とどう向き合うかについて、来場者とやりとりを進める中で考えを深めてゆきました。
まず「UD(ユニバーサルデザイン)」の考えが施された製品例をてがかりに、あらゆる立場にとってわかりやすい授業をすることで、全体の学びにつながる「授業のユニバーサルデザイン」の説明がありました。これに続いて講演の本題である「障がい」そのものに関する考え方の解説があり、「障がい」に対する考え方は昨今変化しており、機能障害で障がいをとらえるよりも、環境因子による障がいの認識が重要であると話されました。その後、合理的配慮の例や、アシスティブテクノロジーの例を提示しながら、教育の場における合理的配慮を進めるためには、組織が障がい者向けの支援機器に金額をかけるのみならず、周囲の理解こそが必要であると指摘されました。
全ての発表者の発表の後に行われた総括質疑では、本学学生による質問もあり、保育・特別支援の場面におけるICTを活用した教育関連の研究会としては、非常に充実した研究会になりました。