18 鯖売り三吉-牛方と山姥- 

 鯖売り三吉が鯖売って帰りに、山で何か化物に追っかけらっでな、追っつかれそうになっど、鯖を一匹投(ぶ)ってやって、それをムシャムシャ食ってるうちに、逃げ逃げして、やっと逃げてきて、ある一軒家に逃げ込んだど。そして天井さ上がって隠っでるうちに、化物帰って来て、火焚いて酒のオカンをしたど。そしてコックリコックリ居眠りしてるうちに、屋根のオノガラ抜いて、それをチュウチュウと吸ってしまったど。そのうちに目覚まして、
「火の神さま、あがりやったべ」
 どかて。こんど仕方がないから、餅焙って食うかなて、餅焙ったど。プウとふぐっじゃ頃ねらって、またカヤ棒でそっと取っては食っていだっけど。そして、 「何もないから、寝っことにすっか」
 て言うことで、
「石の唐戸にすっか、木の唐戸にすっか」
 て言うど、木の唐戸さ寝たごんだかな、そしてるうちに、夜中にそっと起きでって、錠をしめて、キリで穴をあけて、お湯を入っで殺したど。とーびったり。
(井上元一)
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