34 魚女房 

 浜の近くに、一人で漁師してある人さ、魚化けて来た。そして雨降る時来て、
「泊めてもらいたい」
 そして泊めたら、いつまでもよっても帰って行かない。そうすっど、
「お嫁にしてもらいたい」
 て言わっだど。そしてお嫁にしているうちに、御飯炊いて、お汁(つけ)煮っずだな。そうすっど毎日、ハラコてなぁ、鮭から取る、あいつを煮て食せらっじゃど。
「なえだて、不思議なもんだ」
 て、山さ稼ぎに行くふりして、その物置きの二階さ上がって見っだ。そしたらそのお汁を擂って鍋さ、ちゃんと股はってな、ハラコを出して、腹から、そして煮てくれるど。そしたら気味悪くてお嫁にしておかんなくなって、そして話したそうだな。そしたら、
「おれは、こういう鮭の化けたのだから、こうすっど、こういうあんばいに化けんなねもんで化けて、お嫁に来たなだから、悪かったから、堪忍してくろ」
 て謝まって、雑魚になって、裏の池さ入って泳いで行ったど。とーびん。
(男鹿てつの)
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