44 瓜姫子と天邪鬼 

 子どもの持たないじじとばば暮していて、瓜蒔いて、瓜食うべと思って割ってみたれば、中からめんこい女の子が生まっじゃと。
「瓜から生まっじゃがら、瓜姫子と名付けろはぁ」
 て瓜姫子と名付けてはぁ、とてもめんごがって、瓜姫子、瓜姫子て、じじとばば育てて、そしてまいどの子どもなもんだから、八つ九つあたりから機織りしたもんだど。一生懸命機織った、上手なもんで、
「おれ、機織っから、ばば、ばば、糸拵えておくやい、糸うんでおくやい」
 て、うんでもらって、機織りなど上手であったど。その瓜姫子ざぁ、トコロ好きでな、
「んで、今日、トコロ掘って来っから、お前機織りしてで、決して戸を開けんなよ、この辺に天邪鬼ざぁいて、誰もいないとき、お前だようなどさ来て、とって食(か)れっから、殺されっから、決して戸開けんな、戸さえも開けねど来ねから、戸開けねで、おらだ帰って来るまで、一人で機織りしてろよ」
 て、教えて、じじとばば、山さトコロ掘りに行った。して行ったれば、やっぱり「瓜姫子、瓜姫子」て来たてよ。そして機織りして、トントン、トントンと織っでだもんだから、いねふりもさんねんだし、「はい」て言うたれば、「戸開けて呉ろ」「戸開けらんね、じじとばば、決して戸開けんなよて言うて行ったもんだから、決して戸開けらんね」
「ちいと開けて呉ろ、お前どこ、ちいと見えっど、ええなだから、ちいと開けて呉ろ」
「開けらんね」
 て、何べんも言うたじげんども、
「ちいとでええがら、指半分入るくらいでええから開けて呉ろ」
 て、聞かないもんでな、んだから少し指も入んねぐらいだげんど、開けて呉っじゃど。そうしたところぁ、そっからガラリと開けて入ってきて、瓜姫子、機織ってたのを、引張り降ろして、そして殺してしまって、自分が瓜姫子に化けて、瓜姫子の装束して、一生懸命機織りしてたとこさ、じじとばば帰って来たど。
「瓜姫子、今来た」「今か」「トコロいっぱい掘ってきたから、茹でて呉っからな」て言うて、茹でて、「ほら食え」「はい」て食ってだけざぁ、ガモガモ、ガモガモて、皮もむかねで、常の瓜姫子だど、きれいに皮もむいて食うな、ガモガモ、ガモガモと皮むかねで、なんぼでも食うもんだど。
「おかしいな、瓜姫子、何だべな」
 て、じじとばば考えてな、いたげんど、そっくりな格好は、瓜姫子なんだし、おかしいなと思ったげんども。次の日になって、そうすっじど、「瓜姫子ざぁ、ええ娘だ」ていう評判でな、殿さまからもらいに来た。そしてもらいに来(く)らっだもんだから、「呉っでやんなね、いたましいげんど」て、いっぱい着物買って呉っで、篭で御祝儀に迎えに来たけど。どんどん、どんどんと送り出してやんべと思って、家の前さ出はって、篭さのせんべとしたれば、きれいな鳥ぁとんできて、そして家の前さ、青木植えっだのさ、チョコンと停って、
    瓜姫子の のり篭さ
    天邪鬼ぁ のりーた のりーた
 て鳴(な)っこんだずも。そうすっど何なもんだべと最初のうちは聞き取らんねくて、
「変なこと語るもんだなぁ」
 て思っていたげんど、またそういう風に、何べんも言うてよ。そしてねつく聞いてみっど、
    瓜姫子の のり篭さ
    天邪鬼ぁ のりーた のりーた
 て言う。「これは変なこと言う」と思って、何だか変な瓜姫子になったなぁと思っていたどこさ、そういうこと鳥が言うごんだから、見たところが、
「瓜姫子の、のり篭さ、天邪鬼ぁのりーた、のりーたて、あの瓜姫子、天邪鬼に殺さっではぁ、化げっだかなぁ」
 て思って、「畜生、天邪鬼で、気付がったか、ほんでは見はらかして呉んなね」て言い出したら逃げ出したって。そして向いの山のカヤ株の中さ隠っじゃど。そしてそこで叩き殺してはぁ、カヤ株の中で殺してはぁ、叩いたれば、血うんと出て、そして今カヤ刈りしてみっど、根っこ赤いもんだ。それは天邪鬼が叩がっで殺さっだ血がカヤの根っこさ喰付いて赤いんだど。むかしとーびったり。
(佃 すゑ)
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