1 ねこあしの由来

 ある人が、ちょうど猫の足に似た草とってきて、煎じて飲んでみたらば、非常に腹の具合がよくなった。んで、下痢したときでもええがなぁと思って、飲んでみたれば、とっても具合ええもんだったど。友だちさ、
「いや、ねこの足みたいな恰好しった葉っぱの草…」
「ああ、あいつぁ〈ねこあし〉て言うんだ。この辺では〈ねこあし〉ていうんだ」
「ああ、その〈ねこあし〉飲むと治る」
「あだなつまらね草で下痢治っか」
「いや、治る」
 ところが、ほの人がやっぱり食い合せ悪くて下痢したとき、
「おう、君、下痢した」
「ほんでも、下痢しても〈ねこあし〉で治んねものがある」
「はいつは何だ」
「赤腹だ。赤腹ざぁ赤痢のことだ。赤腹になっど治らねげんど、赤腹以外の下痢はみな治る」
 ほして飲んだ。飲んでみたればやっぱり治った。ほして、
「あいつぁ何ていう草だけぇ」
「〈ねこあし〉ていうなだ」
「治ったぜぇ、腹痛いな」
「はいつぁ、ゲンノショーコだべな」(それがまさしくその証拠だ)
 ほれから、〈ねこあし〉のことを〈ゲンノショーコ〉ても言うのだけど。
 どこの家でも土用の丑の日に採って干しておく、その頃が一番充実した頃なんだけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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