22 舌切り雀むかしあったけど。じんつぁとばんつぁど、いでやったど。そしてじんつぁは柴切りに行く、ばさまはせっせと継(つ)ぎものしたり、糊つけたり、働いであったど。そうしてある日、じさま、雀こ一羽とってきたずも。そしてはぁ子ども持たないんだし、大事に篭さ飼って育てておいたどこ、篭から出て餌呉(く)っでも逃げて行かなくなったど。そしてある日、 「ばさ、ばさ、雀の餌忘れんなよ」 て、また山さ行ったど。そして外さ出して遊ばせて、ばさま、ええ空だし、糊つけすんべと思って、糊拵えておいて、そしてこんど、ばさま布地見てるうちに、雀糊なめたもんだじも。そしてうまいもんだから、あらましなめてしまったど。それ、ばさま見つけて、こんど、 「なんだこの野郎、にさか、舐めたな。待て待て、そんな悪いことする。舌など切って呉れっから」 てハサミでチョッキリ、先の方切らっでしまったごんだずも。そして、 「どさでも行け」 なんて飛ばしてやったど。そしてはぁ、鳴き鳴きとんで行った夕方、こんど、じさま帰ってきたどさ、いねもんだど、めんごは…。そうすっど、 「ばさ、ばさ、めんごはどうした」 「おれ、糊付けすんべと思って、拵った糊舐めたから、舌切って飛ばしてやった」 と言うど。 「やれやれ、可哀そうなこと、そんでは、おれ探しに行って来(こ)んなね」 て、そして、 「どっちの方さ飛ばしてやった」 「そっちの方だ」 なんて言うもんだから、そっちの方さ行ったど。疲れて来たもんだから、杖棒ついで、 舌切り雀 お宿はどこだ 舌切り雀 お宿はどこだ て行ったば、竹やぶあったど。そうしたば、いっぱいの雀がチュンチュン、チュンチュンて出てきて、 「おじいさん、よく来て呉っだ。めんごのお宿はここだから、寄って呉ろ」 て言うずもの。そして寄ったらば、 「その舌もよっぽどよくなった。痛みもとれた」 ていうずも。そして、 「ええじんつぁだから、みんな御馳走してくろ」 てはぁ、御馳走して、雀踊りなど見せてはぁ、御馳走なったど。そして、「泊まれ」て泊めてもらって、「帰って行ぐ」て言うたらば、 「お土産くれる。大きなツヅラええか、軽いちっちゃいツヅラええか」 て言うたら、 「年いって、重たい大きなもの、背負わんねから、ちいさいな呉ろ」 て、そう言うたど。そして貰って来て、家さ来て、こんど、 「ばさ、ばさ、雀の家さ泊ってきた。そしてこういうお土産もらってきた。何はいったか開けて見っだい」 て開けたど。中から絹の着物だの、さまざま軽いものなどはぁ、いっぱい出てきたど。ええもの。そうしたば、ばさま、 「ほんでは、おれも行ってみて来(く)んなね」 て、次の日こんど、ばさま行ったごんだど、そしたばあまり出迎えでも呉んねがったじども、「よく来た」ぐらいなこと言うたべちゃえ、そしてばさまも御馳走になって来るというたど。泊れて言わんねんだから、夕方来るというたど。 「お土産くれる。大きい重たいツヅラええか、小さいツヅラええか」 「力持ちだから、重たいなええ」 て言うずもの。そして大きなもらって背負って来たずも。途中まで来たらあんまり重たいし、開けてみたごんだど。そしたば、蛇だの百足(ムカデ)だの蜂だの、いっぱい出はってはぁ、ばさまば刺すやら喰付くやらしたごんだど。ばさ、切(せつ)ながって泣き泣き家さ帰ってきたど。血だら真赤になって。じさ、夕方、飯炊いて食う頃だと思って眺めたば、向うの方から赤いぐなってはぁなぁ、音すっずも。あんな赤い衣裳もらって唄などうたって来たぜと、こう思っていたど。そうしたば血だら真赤になって、泣き泣き来たなであったど。そして、 「なんだ、まず、ばさま」 て言うたら、 「いやいや、これこれであった」 と言うたど。んだから慾かいだり、あんな小さい者の舌など切るもんでないぜって、じさまに悟さっだど。むかしとーびん。 |
〈話者 川崎みさを〉 |
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