くらしと倫理学
開講年次:2年次
卒業:選択
開講時期:後期 授業形態:講義 授業回数:15 回 時間数:30 時間 単位:2 単位
平 田 俊 博
■ 科目のねらい
この科目は、ディプロマポリシーにある「子どもを取り巻く地域社会の教育資源や今日的課題の理解」を達成
するために、社会の出来事に幅広く関心を持ち、理解することを目指して設置されている。
■ 授業の概要
「倫理」という言葉を丁寧に調べることで、くらしの倫理とは何か? 家族倫理とは何か? 世代間倫理とは何か?
情報倫理とは何か? メディア倫理とは何か? について考えていく 。内容としては、ケータイやスマートフォン
などの、情報メディア革命による社会環境の急激な変化と、変貌する「くらしの倫理」とに、対応できる倫理観について、テキストや辞書、さらに日々の新聞記事やビデオ教材を参考にしながら、皆で意見を交換する。レポートにまとめたりして、各自が自分の意見を固め、表現できるようにする。
■ 達成目標・到達目標
① くらしと倫理について確実に理解し、説明することができる。
② 自分の倫理観を確立して、自分のくらしや生き方の基本方向を見定める。
③ 他人のくらしや生き方を理解して、自分との違いを把握し、教育に役立てる。
■ 単位認定の要件
①~③の合計で60点以上の点数を獲得すること。
■ 単位の認定方法及び割合
期末試験:60% 授業内提出物:20% 授業内試験:10% 授業内活動:10%
■ 授業計画
- 第1回 倫理学とは何か?
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倫理学が哲学の一分野であることを示す。授業計画の全体について説明する。「くらし」とは何か、人間とは何か、人生とは何か、家族の重要性、教育の必要性、性道徳、育児の意味、介護の意義、を学ぶ。人間の尊厳と人権が、倫理学の基盤であることを認識して、コミュニケーション能力を磨き、チームアプローチの技術に習熟することが「くらし」にとって重要なことを理解する。
- 第2回 倫理とは何か?
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倫理を対象とする倫理学が、法律を扱う法学や、慣習を扱う社会学、と違うことを学ぶ。法律的な罰則を伴う法学や、世間的な賞賛ないし非難を伴う社会学と違って、現代の倫理学は、主として個人の良心と決断に立脚することを理解する。個人主義的な現代倫理と、伝統的な家族倫理、の違いを学ぶ。
- 第3回 くらしと人間観
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日々のくらしが、時代状況や人間観と共に変化することを理解する。系統発生的な進歩観から、個体発生的な発達観への、価値の転換を説明する。人間が人間を産み、個体発生は系統発生を反復するという思想は、21世紀に大きく修正を迫られた。一個の人間の受精卵が、出産を経て成人に達するまで長い発達期間を要することを学び、他人に説明できるようになる。胎児期から保育期の子育ての決定的重要さを深く理解する。
- 第4回 情報化社会とは何か?
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この60年来テレビやケータイの普及により、私たちのくらしが大きく変化した。大人も子どもも多様な電子映像メディアに囲まれ、いつでもどこでも情報の海の中で生きるようになったことを理解する。こうした情報化社会では、メディアを批判的に受け止め、メディアに対する主体性を培う、メディア・リテラシー教育や情報安全教育が不可欠なことを理解する。
- 第5回 情報倫理とは何か?
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情報メディア革命によるくらしの急激な変化について説明する。スマートフォンなどの個人用携帯通信機器の爆発的浸透によって、社会環境を初めとして、家庭環境、学校環境等が一変してしまったことを学び、他人に説明できるようになる。ケータイ機器とどう付き合うかが、現代の情報倫理の最重要課題であることを理解する。
- 第6回 人体実験国ニッポンの現代のくらし
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メディア倫理が確立していない現代日本の、危機的状況について説明する。電子映像メディアへの接触時間が世界一と言われる日本の子どもたちが、人類史上初めて人体実験にさらされていることを学び、他人に説明できるようになる。人体実験国ニッポンのくらしの現状と危険性を深く理解する。
- 第7回 メディア漬けとは何か?
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メディア漬けによる子どもたちの生命感覚・身体感覚の劣化について説明する。乳幼児から大学生まで、今や日本の子どもたちは、自由になる時間のほとんどを室内で、体を動かさず言葉を発することもなく、孤絶して、電子映像メディアと向き合って過ごすようになっている現状を理解し、他人に説明できるように
なる。
- 第8回 メディア漬けと社会性;中間試験
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メディア漬けが進むと家族との交流や言葉のやりとりが少なくなり、幼ければ幼いほど、現実の人間とのコミュニケーション能力が未発達になることを学び、他人に説明できるようになる。そうした子どもたちは社会性が育たないので、言葉を使わず噛みつく、引っ掻く、体当たり、奇声などで感情を表現し、暴力行為に走りやすいことを理解する。理解の程度を確認するために、中間の授業内試験を実施する。
- 第9回 メディア漬けと大脳異変
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乳幼児期からの長時間のメディア接触が、聴覚をはじめとする脳の神経回路形成にも影響を及ぼして、人間としての基本的な部分にまで悪影響をもたらすことを学び、人に説明できるようになる。長時間、電子映像メディアに接触すると、人間らしさを司る大脳の前頭前野の機能が低下し、自己制御ができなくることを深く理解する。
- 第10回 メディア漬けと軽度発達障がい
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人類史上例がないメディア漬けの子育てにより、人体実験国ニッポンでは幼児期から劣化が進み、小学校入学時点で特別支援教育を要する軽度発達障がい児が急増していることを学び、他人に説明できるようになる。
メディア漬けが引き起こす学力低下について深く理解する。
- 第11回 世代間倫理とは何か?
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メディア漬けで劣化した子供たちが親になって子育てを始めた1990年代の後半から、子供の生きにく
さ、育ちにくさの拡大再生産が始まったことを説明する。世代間でさらに悪化する劣化の連鎖について学び、他人に説明できるようになる。劣化の連鎖が社会的格差の連鎖につながり、日本社会の平安を脅かすことを深く理解する。
- 第12回 家族倫理とは何か?
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メディア漬けで育った多面的な発達不全の世代が、いま親となり子育てを始めつつあることを説明する。母性本能が未発達で感情を制御したり未来を予見したりする脳の働きが未成熟な親たちは、乱暴な言葉と暴力で我が子に向き合う現状を学び、家庭内虐待と虐待死の激増に現れていることを説明する。大脳異変の親たちを援助する、新しい家庭倫理について理解する。
- 第13回 メディア依存症とは何か?
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授乳タイムはメールタイムと公言する母親や、ネット中毒で妻や子に向き合おうとしない父親が増大する現状を説明する。赤ちゃんとのアイコンタクトがないネトゲ未亡人の母親の行動が、親子の愛着形成を決定的に拒んでいる現状を学び、他人に説明できるようになる。メディア依存症と愛着形成の破綻の関係を深く理解する。
- 第14回 メディア倫理とは何か?
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各人のメディア倫理観について発表し、意見を交換する。自分を制御して人間関係を築くのが苦手なメディア漬けの若者たちが、どうすれば友人や恋人を作り、就職し、結婚し、子育てをし、家庭を築き上げることができるかを、メディア倫理の観点から話し合おう。
- 第15回 くらしの倫理とは何か?
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これまでの授業を総括して各人のメディア倫理観に基づく、くらしの倫理を語り合い、相互の理解を
深める。人間の尊厳と人権が倫理学の基盤であることをしっかり理解して、コミュニケーション能力とチームアプローチの技能について、相互に確認し合う。
- 第16回 期末試験
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基本事項を正確に理解してレポートを作成することができるか、他人にきちんと説明
できるかを、確認する。
■ 時間外学修
毎回の授業内容を把握しておくことを前提に講義を進めるので、必ずシラバスとテキストに事前に目を通して授業に臨む
こと(毎回約2時間)。配布資料で指定した箇所を事前に予習しておくこと(毎回約1時間)。毎回の講義内容を復習し、課題のレポートを作成(4回以上提出)して、確実に理解しておくこと(合計で15時間)。
■ 課題に対するフィードバック
授業中に実施する小テストやレポートについては、後の授業回にて解説を行う。回収したレポートについては、返却時に
添削と口頭コメント、ならびに全体に対する講評を行う。模範となる優秀レポートを皆の前で、著者がプレゼンテーションし、質疑応答の司会をする。
■ 使用テキスト・教材
清川輝基・内海裕美著『「メディア漬け」で壊れる子どもたち』少年写真新聞社、2009年
■ 参考文献等
電子辞書、国語辞典のどれか1冊を用意。
■ 備考
ビデオ教材やNIE(新聞を教育に)を活用するので、授業計画に少し変更がある場合もある。
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