シラバス

生物学の探究

開講年次：2年次

卒業：選択

開講時期：前期　授業形態：講義　授業回数：15 回　時間数：30 時間　単位：2 単位

鈴　木　　　隆

■ 科目のねらい
本授業科目は，「基礎教育科目」の「基礎教養」に位置付けられています。「基礎教養」科目は，「引き出し」を作るための科目です。「引き出し」を作るためには，「実感を伴う理解」が必要です。「実感を伴う理解」には，自分の言葉でイメージを作り上げることが王道です。身近な食べ物の体における役割を考える過程で，体で起こっていることには
全て，理由（仕組み）があることを学修します。

■ 授業の概要
　普段､飲食している栄養ﾄﾞﾘﾝｸ剤や食べ物に記載されている物質について､その役割を考えたことがありますか｡考えるためには､記載されている物質が､生命を維持する｢しくみ｣でどのような役割を担っているかを知る必要があります｡
　また､これらの｢しくみ｣は環境に順応する形で進化し獲得されてきたものです｡そこで､本授業では､生物がどのような物質を､どのように活用して現在の生存と繁殖のシステムを進化させてきたかを､体を構成する基本物質の化学的性質や基本的な化学反応を考えながら進めます｡さあ､生きている｢しくみ｣を分子の目で眺めてみましょう。
　授業中に課題を出し、グループあるいは個人で考えさせ、考え方を発表させ、つまずきを確認しながら進めます。

■ 達成目標・到達目標
①生物の生存と繁殖にかかわる基本的な「しくみ」について，イメージ化し説明できる。
②生存の「しくみ」が，環境に依存して進化してきたことを説明できる。
③生存と繁殖の「しくみ」を，生体を構成する物質の性質から説明できる。

■ 単位認定の要件
①から③の項目すべてについて，60％以上の理解を示すこと。

■ 単位の認定方法及び割合
期末試験：100％

■ 授業計画

第1回授業のガイダンス

授業の全体像をイメージするため，日常的な生体物質を上げ，どのような役割を担っているか考えさせる。

第2回生命とは何か

自分を振り返り，どうような性質を備えていると生命体とみなすことができるか考えさせ，自己増殖や自己触媒等について説明する。

第3回生命体が次世代伝える情報と生命を維持する物質

自分を振り返り，生きるためには何が必要かを考えさせ，生体反応（代謝），さらに生体反応に関わる酵素（タンパク質）が重要であることを説明する。

第4回情報を伝える基本的なしくみ

同じものを合成するためにはどうようなしくみがあるか考えさせ，分子の認識が必要で有り，そのためには基本的な化学結合が関わっていることを説明する。

第5回情報を伝えるしくみに関わる物質

２０種の物質を使い，様々につないで鎖をつくったとき，同じ配列の鎖をつくる方法を考えさせ，生体ではDNAやRNAが関わっていることを説明する。

第6回保存されている情報から生命を維持する物質の合成

生体は核にあるDNAを基に細胞質でタンパク質を合成する。情報と作用点が離れているときのリンクする方法を考えさせ，セントラルドグマを説明する。

第7回生命体の増殖を可能にする構造体と構造体を構築する物質

自分のものを自分以外の誰にも使わせない方法を，水という環境の中だったらどうするか考えさせ，シャンプーの様な両親媒性物質が関わることを説明する。

第8回構造体の物質構成と環境適応

常温で植物性の油は液体で動物性油は固体である。どうしてか考えさせ，この性質が環境適応と密接に関わっていることを説明する。

第9回構造体における物質交換のしくみとしくみを構築する物質

細胞膜は，水という環境の中に水を溜め込む部屋をつくるためのしくみなので，水に溶けている物質を通すことができない。どうすればいいのだろうか。

第10回構造体の構造維持と生体物質の特性

細胞はある一定の大きさに維持されている。この大きさを維持するしくみを考えさせ，植物ではデンプン，動物ではグリコーゲンが貯蔵されることを説明する。

第11回生命の維持と生体エネルギー

体を動かすにはエネルギーが必要と言うが，どのようなエネルギーを指しているのか再考させ，ATPが関わっていることを説明する。

第12回生体エネルギーの源となる食べ物

炭水化物より脂肪の方がカロリーが高いとか言うが，どうしてなのか。答えはこれらの化学構造式のなかにあるので，ちょっとだけ有機化学にふれて説明する。

第13回食べ物から生体エネルギーへの変換のしくみ

中学校で学習した「C6H12O6＋6O2→6CO2＋6H2O」の化学式に隠れているエネルギーの発生過程を，化学の言葉を使って，少しだけ詳しく説明する。

第14回呼吸と生体エネルギー

呼吸で吸収された酸素の役割を考える。上の化学式のO2であるが，どの様な反応に関わっているのか，ここも化学の言葉を少しだけ使って説明する。

第15回環境応答と細胞間コミュニケーション

生命を維持するために，細胞外の環境変化にすみやかに応答する必要がある。応答は細胞内のしくみ
である。細胞外から細胞内への情報伝達のしくみを考える。

第16回期末試験

■ 時間外学修
復習をしっかりする｡板書事項を振り返り､単語の記載だけでなく､単語と単語を｢線｣でつないで現象の全体像をｲﾒｰｼﾞできるようにﾉｰﾄを整理する｡特に未学修の単語については辞書等で必ず確認しておく（目安時間：約3時間）。授業中に課された課題については，配付用紙に考察・レポートする（目安時間：各回約1時間）。

■ 課題に対するフィードバック
授業中に課したレポートについては，全体をまとめて解説する。

■ 使用テキスト・教材
教科書は指定しない。授業時に必要なプリント資料を配布する。

■ 参考文献等
高校の教科書（生物基礎，生物，化学基礎），Essential細胞生物学（南江堂）

■ 備考
高等学校における学習歴にこだわらないで，日常，見聞きする言葉で生命を維持するしくみを考え，生命の不思議さを実感し，全体像を自分の言葉でイメージできるようにしましょう。

2019年度 シラバス 人間科学部 子ども教育学科

2019年度　シラバス　　人間科学部　子ども教育学科