シラバス

地域と多文化

開講年次：4年次

卒業：選択

開講時期：後期　授業形態：講義　授業回数：15 回　時間数：30 時間　単位：2 単位

西　上　紀江子

■ 科目のねらい
この科目は、専門教育科目で修得した知識・技能を一層高め、教育・保育の現場で実際に応用できる能力の修得を目指し
て、専門発展科目の「地域社会の理解」に区分されており、選択科目として配置している。

■ 授業の概要
私たちはどの一人も生まれ育った家庭や地域の文化を背負って生きていますが、異文化に接触しない限り自分が身につけ
ている文化には気がつかないものです。
この授業では、日本（山形）に暮らす外国出身者の歴史的背景や現状を理解し、今や日本のほとんどの保育施設、学校に存在する外国にルーツを持つ子どもの支援について考えます。
生まれながらに複数の文化を背負って生きる、或いは学齢期の途中で二つの文化を行き来するとはどういうことなのか、
本人や地域が多文化な存在を宝と思えるような環境を整えるためには、発達のどの段階でどのような支援が必要なのかに
ついて考えたいと思います。
授業はグループ形式で行います。グループメンバーの意見を参考に、自身の考えを深め発展させることを目指します。
また、毎回リアクションシートに授業で考えたことを簡単に記述し、提出してもらいます。

■ 達成目標・到達目標
①山形県内の国際化の特徴や情況を全国の趨勢と比較して理解し、人に説明できるようになる。
②個人や民族が継承する習慣や価値観など、文化が様々な側面を持っていることを理解し、例を挙げて説明できる。
③外国にルーツを持つ子どもの背景、特性を理解し、子どもの情況に沿った支援を考え、提案できる。

■ 単位認定の要件
上記①～③の理解度を確認する課題の要件を満たした上で、合計60点以上獲得すること。

■ 単位の認定方法及び割合
期末レポート：45％　授業内提出物：25％　授業内試験：30％

■ 授業計画

第1回ガイダンス

到達目標、授業の方法について説明後、移民と難民について考えます。

第2回私が考える外国人とは

どのような人を私たちは「日本人」と認識するのでしょうか。また、国籍を持つことの意味は何でしょう。
世界の国々の考え方を参考に、日本政府の考え方を探ります。

第3回山形の国際化の特徴

在留資格について基本的な知識を学びます。また、山形にはどのような在留資格を持つ人が多いのかについて､その背景とともに考えます。

第4回外国人と労働～その１　技能実習生

技能実習生として来日し、働いている人たちをめぐる労働環境、及び移住女性の人身売買を取り上げたDVDを視聴し、移住者を取り巻く人権の現状を、考えます。

第5回外国人と労働～その２　日系人

ブラジル移民の歴史をたどり、現在来日している日系人をめぐる課題について学びます。その後、
沖縄の移民カルタの文言をグループで確認、当時の移民の生活を想像しつつ、2グループに分かれて、カルタを取り合います。

第6回外国人と労働～その３　なぜ沖縄か

日本の縮図としての沖縄の貧困について学習し、カルタに描かれた世界を手がかりに、海外日系人の
その後、そして祖国日本に子孫が入国している状況について確認します。

第7回在日コリアンとは　その１

日本で生まれ育ったのにコリアン？在日コリアンが今も存在し続ける経緯と現状を学びます。

第8回子どもの目から見るブラジル移民と在日コリアン

テキスト所収の在日2世コウケンテツさん、ブラジル移民2世の響兄弟へのインタビュー記事を読み、複数文化を擁する家族の
抱えやすい困難とその中を生き抜くプラス要因について、考えます。

第9回中間テスト及び母語・継承語

日本にどんな移住者が生きているか、山形の国際化の特徴についての基本事項が理解できたか、確認の小テストを行います。
その後、多文化家庭に育つ子どものことばに焦点を当て、母語・継承語について学習します。

第10回国際結婚家庭の子育て

日本に暮らすタイ人家庭の子育ての悩み、コミュニティの力を取り上げたDVDを視聴し、グループで国際結婚家庭が直面しやすい課題とその解決に、どのような社会資源が有効だったかを振り返ります。

第11回中間テストの振り返り　及び母語・継承語～その２

前回実施した中間テストの解答及び振り返り。その後、前回学んだ知識を事例で確認し、言語間移動に伴う困難とその背景について考えます。

第12回映画「ハーフ」鑑賞

日本人としてのアイデンティティを持つ5人の若者が、自らの国籍や血統、歴史的経緯、世間の偏見等により「外国人」として扱われること、排除されることをどう考え、行動したかを描いたDVDを鑑賞します。

第13回期末レポートの準備～その１

山形の移住者として欠かせない中国帰国者への理解を深めるために、『捨てられた民の記憶』を読みます。
その後、外国ルーツの子どもの支援に関する配布資料をグループで読み、意見を交換しながら、レポートの準備をします。

第14回期末レポートの準備～その２

どのような支援が必要とされるのか、日本の各地ではどのような支援が為されているのか、そして山形にはどのような社会資源があるのかについて学びます。

第15回期末レポートの準備～その3

テキストの事例、『ハーフ』、14回までの授業を振り返り、レポートを書く準備を整えます。

■ 時間外学修
毎回の授業プリントを熟読し、ノートを使って理解した内容を整理し、他者に説明できるようにしておくこと（毎回30分）
また、テキストの指定された章を丁寧に読んでくること。（30分）
また、課題やレポート執筆のために、関連する内容について図書館で調べたり、書籍の該当箇所を読み込んで授業に臨む
こと（4時間）。

■ 課題に対するフィードバック
学期途中に実施する中間テストについては、後の授業回において解説を行う予定である。
リアクションシートについても後の授業回において、全体で共有したり、講評を加える。

■ 使用テキスト・教材
授業内に資料を配付します。その他、川上郁雄編著『私も「移動する子ども」だった』（くろしお出版）を適宜使います。

■ 参考文献等
野村進著『コリアン世界の旅』（講談社文庫）、｢外国につながる子どもたちの物語｣編集委員会『まんが　クラスメイト
は外国人』（明石書店）

■ 備考

2019年度 シラバス 人間科学部 子ども教育学科

2019年度　シラバス　　人間科学部　子ども教育学科