理科教育法A
開講年次:2年次
卒業:選択 小学校教:必修
開講時期:前期 授業形態:演習 授業回数:15 回 時間数:30 時間 単位:1 単位
鈴 木 隆
■ 科目のねらい
この科目は,小学校における理科教育を構想し,具体化し,実践するための専門的知識として,「理科の目標」「理科の学習方法」「理科の内容」を理解するために設置した科目であり,教職課程の「教科及び教科の指導法に関する科目」に位置付けられている。またこの科目は「理科教育法B」とは対に,さらに「理科Ⅰ」及び「理科Ⅱ」とも密接に関連しているので,これらの4科目を全て受講することが望ましい。(DP中項目②③⑨)
■ 授業の概要
全授業を通し,理科教育の最終目標である「科学的な解決」力の育成の基盤となる「理科の見方・考え方」を考察するとともに,「A物質・エネルギー」区分における児童の素朴概念を提示する。その変容を図る指導方法を探究するため,課題解決型学習的に指導案をグループで作成させる。そこで,「A物質・エネルギー」区分の内容で,特に素朴概念が強い「物質」について,科学的な基礎概念である「粒子」概念を使用して説明できるように,課題解決型の授業を通して,理解を深める。
「知識基盤社会」と言われる21世紀で活躍できる子どもを育むためには, 課題解決能力を育成できるかどうかがポイントである。課題解決能力は「見えないものを見る」力であり,「見えないものを見る」は「科学的な解決」そのものである。この授業と「理科教育法B」を通して「科学的な解決」の基盤となる「理科の見方・考え方」を,しっかりと自分のものにすること。
■ 達成目標・到達目標
①小学校理科の各学年の目標を理解し,「理科の見方や考え方」の観点から説明できる。
②小学校理科の「A物質・エネルギー」区分の内容を,「理科の見方」で論理的に説明できる。
③小学校理科の「A物質・エネルギー」区分における児童の素朴概念の変容を図る指導案を作成できる。
■ 単位認定の要件
①から③の項目すべてについて,60%以上の理解を示すこと。
■ 単位の認定方法及び割合
授業内提出物:10% 授業内試験:90%
■ 授業計画
- 第1回 小学校理科の目標
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理科の教科目標を確認するとともに,理科の学習は,子どもの持つ素朴概念から自然科学概念へ変容を図ることであることを意識する。
- 第2回 小学校理科の最終目標である科学的解決能力の育成
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科学の研究方法を学びつつ,「課題解決方法」と理科の最終目標である「科学的な解決」が同じ方法論であることを学修する。
- 第3回 学年の目標と科学の研究方法
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学年目標と科学の研究方法を対比し,子どもの自然科学認識の発達段階を把握する。
- 第4回 区分「粒子」と「エネルギー」における素朴概念の変容を図る指導案の作成1
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指導案の構成について理解する。特に,「児童観」には素朴概念を明示するとともに,「本時の授業」には,子どもの素朴概念の変容を図っていることを明確に提示する。さらに,指導案は情報機器を使用して作成し,「本時の授業」には,教材の活用について提示する。
- 第5回 区分「粒子」と「エネルギー」における素朴概念の変容を図る指導案の作成2
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グループで,子どもの素朴概念あるいは自分たちが持っていた素朴概念から1つ選択し,その素朴概念にかかわる内容を題材に,素朴概念の変容を図る指導案を検討する。検討を基に情報機器を使用して指導案を作成し,毎回の授業時に情報機器や教材の活用を含めて発表する。担当グループ以外の学生には指導案の対する「気付き」を考察させる。
- 第6回 「粒子の存在」における素朴概念の把握と自然科学的考察1
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提示された「空気と水の性質」における子どもの素朴概念について,その原因の探究を通して,原子や分子が安定して存在するしくみの理解を図り,「空気と水の性質」についての自然科学概念を確認するとともに,素朴概念から自然科学概念への変容を実感する。
- 第7回 「粒子の存在」における素朴概念の把握と自然科学的考察2
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「粒子」の概念は「数える」ことが基本であり,日常的な現象の「数」として「モル」の概念があることの理解を通して,モル濃度とパーセント濃度との違い実感する。
- 第8回 「粒子の保存性」における素朴概念の把握と自然科学的考察1
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提示された「物と重さ」における子どもの素朴概念について,その原因の探究を通して,質量保存の法則について理解を図り,「物と重さ」についての自然科学概念を確認するとともに,素朴概念から自然科学概念への変容を実感する。
- 第9回 「粒子の保存性」における素朴概念の把握と自然科学的考察2
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提示された「物の溶け方」における子どもの素朴概念について,その原因の探究を通して,化学結合について理解を図り,「物の溶け方」についての自然科学概念を確認するとともに,素朴概念から自然科学概念への変容を実感する。
- 第10回 「粒子の結合」における素朴概念の把握と自然科学的考察1
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提示された「水溶液の性質(酸性,アルカリ性,中性)」における子どもの素朴概念について,その原因の探究を通して,日常的な単位pHについて理解を図り,「水溶液の性質」についての自然科学概念を確認するとともに,素朴概念から自然科学概念への変容を実感する。
- 第11回 「粒子の結合」における素朴概念の把握と自然科学的考察2
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提示された「水溶液の性質」における子どもの素朴概念について,その原因の探究を通して,中和反応について理解を図り,「水溶液の性質」についての自然科学概念を確認するとともに,素朴概念から自然科学概念への変容を実感する。
- 第12回 「エネルギーの見方」における素朴概念の把握と自然科学的考察1
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提示された「光の性質」における子どもの素朴概念について,その原因の探究を通して,太陽光線の性質についての理解を図り,「光の性質」についての自然科学概念を確認するとともに,素朴概念から自然科学概念への変容を実感する。
- 第13回 「エネルギーの見方」における素朴概念の把握と自然科学的考察2
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提示された「てこのつり合い」における子どもの素朴概念について,その原因の探究を通して,力のモーメントについて理解を図り,「てこのつり合い」についての自然科学概念を確認するとともに,素朴概念から自然科学概念への変容を実感する。
- 第14回 「エネルギーの変換と保存」における素朴概念の把握と自然科学的考察1
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提示された「電気の働き」における子どもの素朴概念について,その原因の探究を通して,豆電球と明るさと電池の接続について理解を図り,「電気の働き」についての自然科学概念を確認するとともに,素朴概念から自然科学概念への変容を実感する。
- 第15回 「エネルギーの変換と保存」における素朴概念の把握と自然科学的考察2:
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提示された「電流の働き」における子どもの素朴概念について,その原因の探究を通して,オームの法則についての理解を図り,「電流の働き」についての自然科学概念を確認するとともに,素朴概念から自然科学概念への変容を実感する。
■ 時間外学修
学修内容を他者に説明できるようにノートの整理を行う。学修した内容は,点でなく線や面になるようにしないと理解につながらないし,後で引き出しから出そうとしても出てこない。板書事項は,往々にして知識の羅列になることが多いので,板書事項を単に写したノートでは,引き出しを作ることができない。学修内容を調べ直して行間を埋めるようなノートの整理が必須である(目安時間:各回約2.5時間)。
さらに,作成・発表された指導案に対する「気付き」及び単元内容に関わる素朴概念と自然科学概念との関係を意識させるため,内容に関わる自然科学的課題を課し,次授業まで配付用紙に考察・レポートさせる(目安時間:各回約1.5時間)。
■ 課題に対するフィードバック
授業中に課したレポートについては,全体をまとめて解説する。
■ 使用テキスト・教材
・文部科学省「小学校学習指導要領解説理科編」
・鈴木隆,須賀一好,花屋道子編著『「主体的・対話的で深い学び」の教育』(東北文教大学出版会,2018)
■ 参考文献等
小学校理科の教科書
■ 備考
これまでの知識を再構築させるために,「どうして,そのように考える?」と課題を提示し,考えさせる授業になるので難しいように感じるかも知れないが,素朴概念から自然科学概念への変容を図るための方法であるので頑張ること。
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