「平成27年度 教育における情報化に関する研究会」を開催しました
平成27年6月27日(土)の午後から夕方にかけて、山形駅前の「ゆうキャンパス・ステーション」を会場に、「教育における情報化に関する研究会」が開催されました。
この研究会は毎年6月下旬頃に開催をしており、今年で3回目となります。
まず、山形市立宮浦小学校教頭の齋藤隆史先生から「山形市における教育の情報化〜これまで・今・これから〜」という演題で、約10年前から現在までの、山形市における教育の情報化の歩みについての講演がありました。
はじめに、教育用イントラネット上に構築されたコミュニケーションシステムや教育用コンテンツ、さらにコンピュータ室へのコンピュータの整備、その後スクールニューディール政策による電子黒板の整備等についてこれまでの経緯の説明がありました。このときに付随して使用方法に関するマニュアルも併せて整備されたことが話されました。
また校内LANの整備についても、普通教室からのフィルタリングを介したインターネット上の情報の活用、ならびに職員室ではセキュリティで守られた通信によって、校務の効率化を念頭に活用されているという説明がされました。
これらの整備状況とともに、どのような形で授業への活用がなされ、子ども達の学びによる笑顔がもたらされたかについても、多数の活用事例に基づく紹介がありました。
今後の課題として、クラウド化やタブレットの導入などにおける、教育の情報化に関する将来の方向の不安定さが残る点と、中期的な計画が必要である点において指摘がありました。
次に、山形県立庄内総合高等学校校長の槇誠司先生より「情報化社会に対応できる予測力の育成を目指して〜微小粒子『PM2.5』を気象衛星から予測する環境汚染〜」と題して、主に科学・理科の領域を中心に、どのように学習者の興味や感心を引き出しながら授業を展開するかについて解説がされました。
まず、東日本大震災における各種メディアの報道内容や、ネット上で流れたうわさ等を引き合いに出しながら、ものごとの内部構造が目に見えないブラックボックス化された現代社会において、科学的な視野に基づく「予測する力」が大切であるという指摘がありました。また情報化社会の中では、人々が予測した結果によって世の中が大きく変化し、それが人々の生命をも左右することにもなるという点についても話がありました。
そして、その「予測する力」を伸ばすことを目的とした題材として、気象衛星から得られる図やデータでPM2.5の状況を予測する課題解決型学習の、丁寧な解説がありました。
その具体的な学習方法とは、教師自身による解法を提示する形式ではなく、生徒達自身が持つ仮説や解法の計画を、一般的に使われるソフトウェア等も活用しながら実際に実行し、その結果をもとに振り返るという一連の活動を通じて、学びのステップを一歩ずつ研究者のようにオープンエンドな課題の上を歩ませるというものでした。
休憩を挟んで、NPO法人伊能社中事務局長の井出健人 氏より「フィールドワークにおけるタブレット端末の活用」という題目で、地図情報の教育的活用、ならびにタブレット等のICT機器を用いた実際の活用事例について発表がありました。
日常的に発せられる情報の約9割は、GIS(地理情報システム)による位置情報が付いているとされており、Google EarthやMANDARAをはじめとした地図処理ソフトウェアに関する基本事項を押さえた上で、Google Earth上に構築された簡単な教材の紹介がされました。
いっぽうで、地図情報を用いた教材データを教育者自ら作ることは可能ではあるものの、教材データを実際に作るには修得に時間がかかるために難しいという問題点が残っているそうです。
この難しさを取り払い、かつタブレットを用いた地理的フィールドワークを教育の場で実践した事例として、タブレット端末上のSNSによる情報交換を伴った避難訓練、そして学校周辺の災害時に役立つ場所の情報共有の、2事例の紹介がありました。
これらの事例を受けて、「なにが出来るのか」「何を学ばせるか」という目的から出発し、全てをICTに委ねずに身近なツールを使って「できることからやる」ことが大切であるというまとめで発表が締めくくられました。
最後に、合同会社デジタルポケット代表の原田康徳 氏より「子どもへのプログラミング教育が本当に狙うべきもの」というテーマで、子ども向けプログラミング環境「ビスケット」の開発を通じた、プログラミング教育の意義に関する解説をしていただきました。
まずはじめに、プログラミング教育には創造性教育・論理的思考力・もの作りという「作る道具」と、コンピュータとは何か・情報とは何かという「原理を知るための道具」という2つの方向性があり、特に後者の観点からプログラミング教育を進めたほうが良いという説明がありました。
次に、このコンピュータの原理そのものを理解するためのツールとして、文字を使わないプログラム環境「ビスケット」が開発されたという経緯が説明され、実際にタブレット端末等を使って参加者による「ビスケット」の体験が行われました。
この体験を通じて、簡単な計算のルールをコンピュータに教えたり、また指数関数的な内容をコンピュータで手軽に扱えることが、体験的に理解できるということが示されました。そしてこの体験を通じて、プログラミングの体験を通じてすべての人が情報化社会に主体的に参加するべきであるという大事なメッセージをいただきました。
会の間に挟んだ休憩時間では、協力企業各社による教育向け情報機器等の展示もあり、来場者の満足度も高かった研究会となりました。